水素の2030年社会実装化に向けた
共同メッセージ
このメッセージは、「HENCA Tokyo 2023」の会議参加者による、水素エネルギーの社会実装化の加速とそのコミットメントについて記載するものである。
現在、私たちは気候危機や世界的なエネルギー供給の不安定化という2つの困難な課題に直面しており、まさに未来を決める分岐点にいる。今こそ、エネルギーの変化により、世界を、未来を変えるときである。
水素は長期間の貯蔵に優れ、多様な分野での活用が可能なことから、エネルギーの安定供給と脱炭素化の両立に大きな役割を果たす。
私たち参加者は、今後もエネルギー移行の最前線に立つ者として連携し、その知恵と経験を結集することで水素エネルギーの社会実装化を加速させ、環境と経済の両面で国際社会をリードしていくことを本会議で確認した。
私たちは、以下のとおり未来を変えるための具体的な行動を表明する。
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小池百合子
東京都知事
- 今こそ、行動により未来に変化をもたらすことが必要です。東京は、水素エネルギーを普及させるために、国際サプライチェーンの構築や需要拡大に向けた実効性のあるアクションでリーダーシップを発揮します。
また、これまで培ってきた経験やノウハウを世界の国、都市、企業と共有し力を結集することで、世界の脱炭素化・持続可能な社会の実現に貢献していきます。
都市間や企業等の連携を広げ、未来のためにともに取り組んでいきましょう。 -
アナスタシア・パラシェ
豪クイーンズランド州首相
- 私はクイーンズランド州首相として、再生可能エネルギー、その中でも特にグリーン水素の分野における私たちの協働について、東京都知事に心からのメッセージを送りたいと思います。相互の信頼と共通の原則によって結ばれた私たち戦略的パートナーは、クリーンエネルギーの未来に向かって旅立とうとしています。クイーンズランド州は豊かな再生可能エネルギー資源に恵まれており、東京のみならず日本の野心的なネットゼロ目標にも大きく貢献できる存在だと信じております。私たちは東京、日本、さらにはその他の地域に対する持続可能エネルギーのトップサプライヤーを目指していますが、そうした中でも私たちの献身の姿勢は揺るぎません。水素を軸とした未来を構想する東京都の先進的なリーダーシップは称賛に値するものです。クイーンズランド州も2019年に州水素戦略を発表し、水素産業の着実な発展というビジョンを打ち出しました。クイーンズランド州エネルギー・雇用計画やクイーンズランド州水素産業戦略への620億ドルという巨額の投資にも、私たちの確固たる決意が表れていると思います。今後も、クイーンズランド州と東京都が力を合わせて、クリーンエネルギーと水素を活用した持続可能な世界への道を切り開いてまいりましょう。
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渡邉博之
米テキサス日本事務所代表
- エネルギー分野における世界的リーダーとして、テキサス州は水素を含むエネルギー分野の更なる発展に取り組んでいます。テキサス湾岸の地域クリーン水素エネルギーハブHyVelocity Hubは、水素インフラと水素供給におけるテキサス州のリーダー的地位を確固たるものにすると見込まれます。HyVelocity Hubは非営利研究機関や学術機関、大手エネルギー企業で構成される協働組織で、州内におけるクリーンな水素エコシステムの推進に取り組んでいます。日本および東京と経済・文化の両面で非常に強い結び付きを有するテキサス州は、水素を活用したエネルギー産業などの新分野の開拓を推進することで、日本および東京とのパートナーシップを発展させ、お互いの経済を強化していけるものと確信しています。
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ヘンドリク・ヴュスト
独ノルトライン=ヴェストファーレン(NRW)州首相
photo:Land NRW / Ralph Sondermann
- 日本とドイツは60年以上にわたり、緊密かつ信頼に足る友好関係を築いて参りました。両国の経済は非常に類似した課題に直面しており、その中でも最大の課題と言えるのが、競争力を維持しつつ、産業と気候保護を両立させることです。ここでは水素が重要な役割を果たし、日本はその先頭に立っています。日本は早くも2017年に独自の水素戦略を掲げ、世界で先陣を切る国のひとつとなりました。東京都は私共にとって特に貴重なパートナーであり、また感謝申し上げます。
私共 ノルトライン・ヴェストファーレン(NRW)州は、2045年までに欧州初の気候中立な産業地域になることを目指しております。グリーン水素を活用すれば、現在のCO2排出量の25%削減が可能になります。この目標の達成に向け、NRW州政府は3年前に包括的な水素経済開発戦略を策定しました。このロードマップでは産業、運輸、エネルギー、インフラの各分野で野心的な目標が設定されています。NRW州は全ドイツ中で、水素経済のハブへと発展するのです。
グリーン水素は気候保護と強い経済を両立させる鍵です。グリーン水素は未来なのです。そして、私たちが力を合わせればこの未来を勝ち取れると、そう私は確信しています。 -
ナンシー・サトリ―
米ロサンゼルス市副市長
(エネルギー・サステナビリティ担当) - ロサンゼルス市は、クリーンエネルギーへの移行の最前線に立っていることを誇りとしており、日本の大手企業とも水素エネルギーのポテンシャルを活かすべく連携を進めています。イノベーションとサステナビリティ、そして経済成長と環境責任が両立する未来に向けた私たちのコミットメントを実証しているのがロサンゼルス港における共同の取組です。私たちはよりクリーンな世界を想像することにとどまらず、ここロサンゼルス市でその構築を積極的に推進しています。(仮訳)
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オン・エンチュアン
駐日シンガポール特命全権大使
- 多くの都市、州、国にとって、気候変動という問題と闘うため、排出量実質ゼロへの一致団結した取組を加速することが不可避となっています。シンガポールもその達成に向けて様々な脱炭素化の経路を研究しており、「低炭素水素」が重要なポテンシャルを持つ方法として浮上してきました。シンガポールは国内での水素普及拡大の準備を進める一方で、アジア全域での水素サプライチェーン構築に向けてパートナーとの協働を展開しています。(仮訳)
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金花 芳則
Hydrogen Council共同議長
川崎重工業㈱取締役会長 - 気候変動への対応が急務となる中、水素は、誰もネットゼロへの道に取り残されないようにするため重要な触媒の働きをします。汎用性が高く豊富なエネルギー源である水素は、環境の持続可能性、経済成長、社会的公平性に貢献し、最終的にはより公平で包括的な社会へと導くことができます。
私たちは、エネルギー転換を促進し、来るべき世代のために、より持続可能で豊かな未来を創造するために協力していきます。イノベーションを推進し、水素技術を拡大し、ネット・ゼロ経済への残された障壁を克服するため、投資、研究、協力を加速させていきます。 -
大平 英二
国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
ストラテジーアーキテクト
(燃料電池・水素分野担当) - 世界の共通目標であるカーボンニュートラルを実現するため、水素は重要な役割を果たすことは言うまでもありません。一方で、水素を本格的に普及させていくためにはまだまだ時間を要することも事実です。
半世紀に渡る研究開発の成果が今実を結びつつあります。私たちはこの歩みを止めることなく、さらに水素技術を核とした協力の機会を創造、拡大していきます。