HENCA Tokyo 2024

グリーン水素の社会実装化の加速に向けた
共同メッセージ

このメッセージは、「HENCA Tokyo 2024」の会議参加者による、グリーン水素の社会実装化の加速に向けたコミットメントについて記載するものである。

経験がないような豪雨や命を脅かすほどの猛暑など、年を追うごとに気候危機の影響は深刻さを増している。同時に、エネルギーを取り巻く環境も激動のさなかにある。
この気候危機という共通課題の解決に向け、私たちは今まさに、未来を決める分岐点にいる。今こそ、エネルギーの変化により、世界を、未来を変えるときである。
再生可能エネルギーから生み出したグリーン水素は、脱炭素社会実現の柱であり、エネルギーの安全保障や安定供給につながることから、その社会実装化は不可欠である。
私たち参加者は、今後もエネルギー移行の最前線に立つ者として官民の連携を強化し、その知恵と経験を結集することでグリーン水素の社会実装化を加速させ、環境と経済の両面で国際社会をリードしていくことを本会議で確認した。

私たちは、以下のとおり未来を変えるための具体的な行動を表明する。

小池 百合子

小池 百合子

東京都知事

今や、気候危機への対策は待ったなしです。東京は、先進的な取組でリーダーシップを発揮し、脱炭素社会実現の切り札となるグリーン水素の実装化を大きく進めてまいります。
この地球規模の課題に対しては、世界の国、都市、企業、団体の皆様との協働が不可欠です。具体的な行動で、未来を変えていきましょう。共に取組を進めることが、世界の脱炭素化・持続可能な社会を確実に引き寄せます。
官民の連携を更に深め、オール東京、オール日本、地球全体で、明るい未来を創り上げましょう。
ラナ・サリア

ラナ・サリア

インドネシア エネルギー・鉱物資源省
大臣顧問

インドネシアは2023年12月に「国家水素戦略」をスタートさせました。水素の利用に向けては、「再生可能エネルギーの開発支援」「脱炭素化目標の達成」「水素を輸出商品として活用」という3つの戦略を策定しています。再エネのポテンシャルは3.7 TWほどに達するとされており、インドネシアは全世界のグリーン水素生産における主要なプレーヤーになる可能性があります。インドネシアのエネルギー転換に貢献するため、水素は、「産業」「運輸」「発電」「輸出商品」の4分野に活用される予定です。現在は、全世界でのグリーン水素普及の加速に向け、知識の共有や連携、取引に関して8つの国際機関とのパートナーシップ構築を推進しています。(仮訳)
アンソニー・リーン

アンソニー・リーン

豪ニュー・サウス・ウェールズ州 気候変動・エネルギー・環境・水資源省
事務次官

気候変動のような地球規模の課題に取り組む上で、ニュー・サウス・ウェールズ (NSW) 州と東京都のような国際的パートナーシップの重要性は、いくら強調してもし過ぎることはない。
NSW州は、水素産業の発展にコミットしている。豊富な再生可能資源、熟練した労働力、そして整ったインフラを持つNSW州は、グリーン水素の製造と輸出をリードする立場にある。
総額30億豪ドルの助成プログラムを含むNSW州水素戦略や、今後予定されている再生可能燃料戦略などのイニシアティブは、技術革新の促進およびコスト削減につながり、グリーン水素を実用的で競争力のあるエネルギー・ソリューションにする。
日本とのパートナーシップも極めて重要である。NSW州と東京都との間で今年締結された覚書は、両者の協力に対するコミットメントの証である。知識と資源を共有することで、ともに成長し、世界的なエネルギー転換から得られる環境的・経済的利益を分かち合うことができる。
リカルド・ロハス

リカルド・ロハス

駐日チリ共和国
特命全権大使

チリは2020年に「グリーン水素国家戦略」を発表し、同戦略では2025年までに電気分解容量5GW達成、2030年までに世界で最も安価なグリーン水素生産、2040年までにトップ3のグリーン水素輸出国になることを目指しています。また、チリは、主要な消費地からの距離に関係なく、クリーン燃料製造における優位性とその高い輸出競争力について、一貫した国際的評価を受けています。
グリーン水素について日本は重要なパートナーであり、この産業を発展させるという共通の認識があることを重視します。チリエネルギー省は、2023年4月に経済産業省と「エネルギートランジションに関する協力覚書」、同年8月4日にJBICと「戦略的協力に関する覚書」を締結しました。
ジュール・ヴェルヌは150年前の小説『神秘の島』で「いつか水が燃料となり、水を構成する水素と酸素が、単独であるいは組み合わせて使用されることで、無尽蔵のエネルギー源になる」と予言しましたが、私たちはまさにそのような時代を迎えつつあります。
マルクス・エクセンベルガー

マルクス・エクセンベルガー

H2グローバル財団 会長

H2グローバル財団は、日本やその他の国々との戦略的連携により、グリーン水素の社会実装化を推進する唯一のグリーンマーケットメーカーであることを誇りに思っています。ドイツ政府から資金提供を受けた最近のパイロットオークションは、グリーンアンモニアの大陸間出荷に向けた契約を初めて実現した重要な節目となりました。今回の成果は、当財団の取組みを示すだけでなく、強靭でクリーンな水素経済への道を切り開くものでもあります。私たちが共に育む持続可能なエネルギーの未来—そこでは、日本のような国々がグリーン水素の可能性を実現する上で重要な役割を果たし、さらにクリーンな地球に不可欠なクリーンな水素経済の始動を推進します。(仮訳)
クレイグ・カーモディー

クレイグ・カーモディー

ニューカッスル港
最高経営責任者

世界最大の石炭輸出港として、私たちは化石燃料の需要が低下する将来に向けて備える必要性を認識しています。
今こそ準備を進める時であり、この観点から、ニューカッスル港ではクリーンエネルギー地区の開発に取り組むと共に、今後もアジアへのエネルギー輸出を続けることに注力していきます。(仮訳)
田中 秀明

田中 秀明

ENEOS株式会社 執行理事
水素事業推進部長

次世代型エネルギーの普及によるカーボンニュートラルの達成のためには、世界各国企業との連携、各国のエネルギー政策と一体となった取組が不可欠です。
水素は、発電・運輸・産業分野等の幅広い経済活動の脱炭素化に寄与するポテンシャルを持っており、カーボンニュートラル実現の鍵を握る有望な次世代型エネルギーの一つであると捉えています。
ENEOSは石油事業で培ってきた経験を最大限活用し、国際的な水素サプライチェーンの構築に取り組むことで、大規模な水素の社会実装を加速させてまいります。
金花 芳則

金花 芳則

川崎重工業株式会社
取締役会長

カーボンニュートラルの実現には水素が不可欠です。
今、地球全体での持続可能性を考え行動を起こす時期にあります。地球を持続可能なものにするために世界各国がカーボンニュートラルに向けて取り組んでいます。
私たち川崎重工は、水素の安定供給のために、使命である液化水素のサプライチェーン構築に取り組んでいます。
カーボンニュートラルという共通の目標に向かって、企業間で技術開発を進め、官民で連携して多くの方々に水素への理解を得、需要を創出し、水素の普及拡大を目指していきます。私たちそれぞれが役割を果たし、協力することで持続可能な未来が拓けるでしょう。
大平 英二

大平 英二

国立研究開発法人新エネルギー・産業技術総合開発機構(NEDO)
ストラテジーアーキテクト(燃料電池・水素分野担当)

カーボンニュートラルの実現に向けて、水素が重要な役割を果たすことは世界的なコンセンサスです。
水素市場創出のための様々な政策も世界中で整備されつつあります。
いよいよ具体的な取り組みを加速させる時期です。
取り組みで特に重要なのはコラボレーションです。技術だけでなく、知識、経験を統合し、新しい価値を創造していくことが必要です。
私はHENCAがその出会いの場となることを期待しています。